大学職員として必要な知識や情報を蓄積するため、大学関連の書籍を読んでいます。

大学職職員を目指す方の就職・転職活動をするうえでは、大学の「業界研究」を行う必要があります。

そのときに、大学関連の書籍を探している人もいると思うので、ネタバレしない程度に参考に学んだことなどをお伝えしたいと思います。

今回は、「「大学改革」という病」です。

書籍情報の紹介

■タイトル
「大学改革」という病-学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する

■著者名
山口 裕之

■略歴(書籍刊行当時)
・徳島大学准教授
・専門はフランス近代哲学、科学哲学

目次

第1章 日本の大学の何が問題なのか―大学改革の論点と批判
第2章 なぜ巨額の税金を使って「学問の自由」が許されるのか
第3章 大学の大衆化と「アカデミック・キャピタリズム」
第4章 選抜システムとしての大学
第5章 競争すればよくなるのか
おわりに 大学になにができ、なにができないか

この本を読んだ理由

・大学において「改革疲れ」という言葉を聞くようになっており、改革し過ぎて本来のやるべきことができないという声があったりします。

・このため、大学改革に否定的な本を読んでみたいと思っていました。

・そんなときにこの本を見つけ、「はじめに」の部分に「大学とは何か。今後どう考えるかを考えるための手掛かりを与える」との記載があったため、読んで見ようと思いました。

学んだことや感想

第1章 日本の大学の何が問題なのか―大学改革の論点と批判

<特に印象に残ったこと>
・文部科学省が進めてきた大学のガバナンス改革について、企業の特性を踏まえながら、大学ではどのようになってきているかについての意見が示されていて大変勉強になりました。

・国や財界が大学に求めることと、大学ができることには、一定の解離があり、大学が何をすべきかについて考えさせられました。

・日本社会の変化により、企業が求める人材像も変化し、それにより大学が変わっていくことが求められていると感じました。

・ただし、大学はそれをすべて受け入れるのではなく、大学ができることを精査すべきだと思いました。

・大学は「社会や企業が求める人材を育成する場なのか」、それても「物事を正しく考える技術を身につける場」なのかは、何が正解かは難しいところだと思いますが、それぞれの考え方を理解することができました。

第2章 なぜ巨額の税金を使って「学問の自由」が許されるのか

第2章では以下について書かれています。

・ウニヴェルシタス――中世社会に花開いた自治的組合
・近代国家の形成と大学の変質

<特に印象に残ったこと>
・大学の発祥となるボローニャ大学やパリ大学の設立の経緯や、その後、大学がどのように変わっていったかについて理解することができました。

・大学の自治について、大学設立当初から、国がどのように管理・監督するようになってきたか、今とは異なる状況であったことは、初めて知ることであり面白かったです。

・ヨーロッパとアメリカの大学の成り立ちの違いがわかり、興味深く読ませていただきました。

第3章 大学の大衆化と「アカデミック・キャピタリズム」

第3章では以下について書かれています。

・大学の大衆化と機能分化
・一九八〇年代以降の展開

<特に印象に残ったこと>
・教育社会学者のマーチン・トロウのいう大学の「エリート段階」、「マス段階」、「ユニバーサル段階」の考え方は知っていましたが、段階が変わっていくごとに、大学のあり方も変わっていかなければいけないということは、まさにそのとおりだと思いました。

・また、「ユニバーサル段階」になったとしても、一般大衆に対する教育だけではなく、一部のエリートに対する教育は必要であり、その機能をどのように役割分担していくかは、考えていかなければならないと思いました。

・大学は企業や国から資金的な援助をしてもらって運営していますが、そのような状況で、研究の中立性を保つことは難しいように思いますが、大学として、しっかりとした仕組みを作っていかなければならないと思いました。

第4章 選抜システムとしての大学

第4章では以下について書かれています。

・大学入試改革の過去と現在
・そもそも、なぜ日本の大学には入学試験があるのか
・大学で職業教育は可能か
・どんな職業に就いても(あるいは就けなくても)生きていける社会を

<特に印象に残ったこと>
・大学入試について、共通一次試験からセンター試験に変更した経緯について初めて知り、勉強になりました。

・日本の教育システムの2つの機能として、教育とスクリーニングを挙げています。この点はなんとなくわかっているつもりでしたが、改めて読むことで理解が深まりました。

・OECDが実施している学習到達度調査によると、日本は多くの分野で上位を占めており、また、日本の入試制度は、世界から一定の評価を受けていることを初めて知りました。

・現在、文部科学省の方針により多くの大学で進めている入試改革は、現在の入試制度と根本は変わらないという指摘は、まさにそのとおりだと思いました。

・入試システムを変えたとしても、その先にある就職のあり方が変わらないと意味がないという指摘は、まさにそのとおりだと思いました。

・日本の企業は社会福祉システムの役割を担っているという考え方を初めて知り、そうすると簡単に日本の企業のシステムを変えるのは難しいと思いました。

・大学は「職業教育を行うべきか」という観点については、色々と考えさせられることがありました。

第5章 競争すればよくなるのか

第5章では以下について書かれています。

・教育は競争で改善するか
・研究は競争で改善するか

<特に印象に残ったこと>
・大学が大学間で競争したときに、中位の大学が上位になること、下位の大学が中位になることは、どんなに競争が激しくなったとしても、その序列が変わることはたしかに難しいと思いました。

・行きすぎた競争は、教育を改善させるどころか、悪化させるという指摘は、大学で働く者としては、意識しなければならないと思いました。

・著者の言うように、これまでも大学改革が進められてきましたが、必ずしも成功しなかったものもあり、失敗をした際に総括がされていなかったり、責任がとられていないということは、まさにそのとおりだと思いました。

・著者が言うように、大学は企業や社会からの要請だけでなく、顧客である学生が何を求めているかを踏まえ、それに対応した改革を進めていくべきだと思いました。

合わせてチェック

大学職員を目指す方へのオススメポイント

・第2章については、歴史的な経緯が中心に書かれており、大学職員でも理解している人は少ないところでもあるので、これから大学職員を目指す方は場合によっては飛ばしてもよいと思います。

・第4章には、日本の入試制度がどのように変わってきたかという点や、世界の中での日本の教育力、国が大学入試に求めていることなどが書かれており、この部分の内容を知っておくと大学業界の理解が深まると思うのでぜひ読んでいただきたいです。

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