大学職員の採用試験に合格するためには、仕事理解や業界研究を行う必要があります。そこで、現役大学職員である管理人が大学職員の「企画・財務・会計の仕事」について解説します。

はじめに

大学職員を目指す人の中には、大学で様々な企画・提案・改善をしたいという人もいます。このような企画・提案・改善をする仕事については、教務や学生支援、研究支援、会計、庶務など、業務の性質は異なってもすべての部署で求められることになります。

ただ、それとは別に「企画課」のような部署を設置している大学もあり、そのような部署では大学全体の横断的な企画や施策の統括をしています。具体的には、大学全体の計画やビジョンを策定したり、その実施状況の把握をしたりしています。

また、大学で新たな企画を実施するためには、お金が必要であり、そのために大学のお金の配分権限のある財務部門や会計部門との調整も必要になります。

つまり財務部門や会計部門を説得できないと新たな施策を実行することが難しいため、ある意味では財務部門や会計部門がその判断権限を持っているとも理解できます。

もちろんお金をかけずにできる施策もあるのですべてではないのですが、財務部門や会計部門も重要な役割を担っているということをご理解いただければと思います。

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企画・財務・会計の主な仕事

企画・財務・会計の仕事については、大学によってはそれぞれ細かい部署に分かれていたり、1つの部署ですべての役割を担っていたりします。

ただ、仮に担当部署が分かれていたとしても、業務のつながりはそれなりにあるので、全体的にどんな仕事なのかを理解しておくとよいと思います。

ここから企画・財務・会計の主な仕事を紹介します。

理事会や経営会議などの会議の運営

各大学では重要なことを決定するために理事会や経営会議などが設置されています。理事会や経営会議は学外委員なども含まれていたりするので、通常の会議よりも気を遣います。

会議の性質上かなり役職の高い方々が参加するのですが、このような方々は必ずしも現場の状況に精通しているとは限りません。このため情報の伝え方を間違ってしまうと、望ましくない方向に物事が進んでしまう場合もあります。

このような会議の担当をするうえでは戦略性が重要になり、大学が間違った方向に進めないように、会議の進め方を考えていく必要があります。

予算の査定・決定

民間企業も大学も同様ですが、組織の収入を踏まえそれをどのように活用していくかを決めていきます。

財務・会計系の部署では予算の査定・決定を行うことが仕事の1つとなっており、予算を増やせばその取組を進めることができますが、予算を削ればこれまでやっていた取組が実施できなくなります。

このため財務・会計系の部署は大学運営の中枢を担っていることになります。

時代によって進めるべき取組は異なってきますが、毎年同じようにお金を使ってしまうと大学改革を進めていくことは難しくなりますので、大学に求められていることを常に把握し、それに対して必要な予算をつけていく必要があります。

資産運用

各大学では一定程度の資金を資産運用に回しています。これは、大学経営を行っていくうえでは重要であり、資産運用することで利子などの収入を得てそれを大学運営に必要な予算に充てるということを行っています。

少し昔になりますがいくつかの大学で資産運用に失敗したというニュースもあり、そのような大学では当初予定していた施設が建設できなくなるなどの影響があったと報道されていました。

次に示す新たな収入源の確保も同様ですが、大学では入試による受験料や入学金、授業料以外の収入が求められており、その1つ方法として資産運用があります。

大学によっては専門の職員を採用していたりしますが、ここではそのような仕事もあるということを理解していただければと思います。

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新たな収入源の確保

最近の大学は教育の質の向上、社会貢献の推進、国際化(グローバル化)など社会から様々なことが求められています。このような要請はこれまでの大学運営にさらに追加で求められていることが多く、この部分は追加の予算が必要になるケースが多いです。

このため、これらに対応するためには新たな収入を確保していく必要があります。

各大学では文部科学省などの競争的補助金の獲得に向けて努力をしたり、寄附金の獲得に向けた動きを見せています。なかなかうまくいっていない大学も多いですが、職員の力の見せ所でもあるので戦略的に考えつつ、収入を増やしていけるよう努力していく必要があります。

大学改革の推進

上記にも記載しましたが現在の大学には様々な改革が求められています。これらの改革にどのように対応していくかは、企画部門の仕事となります。

大学業界の動向を察知し、先生方と協力をしながら必要な改革を進めていくための戦略を考えたり、改革を促したりします。

企画部門は大学の方向性を変えるような施策を実施することもありますが、大学全体の業務量が増える中で、効果の薄い施策や費用対効果の悪い施策を実施してしまうと、逆に大学の競争力を弱めてしまうということもあります。

このため先を見据える力や、裏付けを踏まえて判断する能力が求められます。

監査への対応

大学では文部科学省や日本学術振興会などから多くの補助金をいただいているため、一定期間ごとに監査に対応する必要があります。監査を受けるにあたっては、監査で指摘を受けないように各部署に対して改めて書類をチェックさせるなどの対応を行う必要があります。

また、大学によっては大学独自で監査を行い、手続きや処理のミスがないように対応している大学もあります。

監査部署としては日ごろからミスが起きないように大学内の関係部署に注意喚起を行ったり、実際に監査が行われる際には、事前に準備を行ったり、当日の対応を行ったりする必要があります。

認証評価への対応

認証評価とは文部科学省の認証を受けた評価機関による評価を、7年以内(専門職大学院は5年以内)ごとに受けることを義務付ける制度です。大学によって対応する部署は異なっていたりもしますが、企画系の部署が対応する大学もあります。

認証評価は、事前に各大学が報告書を提出し、それを確認したうえで訪問調査を受けるという流れになっています。大学の活動全体の評価を受けることになるので、様々な部署の協力をいただきながら対応することになります。

訪問調査では学生や卒業生との意見交換を行う場合もあるので、事前に学生や卒業生に協力依頼を行ったりもします。

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教育・研究活動等に必要な物品等の契約手続きと支払い

会計部門では大学活動に必要となる物品の契約や委託会社との契約などを行います。

大学ごとに契約ルールが定められているのでそれに従って適正に処理を行うことになりますが、可能な限り安い金額で契約をするということも必要になってきます。

ただし、あまりに安い契約をしてしまうと品質の悪い物品が納品されたり、委託していた内容を適正に実施しなかったりするので、あまりに安い契約は後々問題になったりもするので難しいところもあります。

大学では相当数の契約を締結しているので、支払い手続きもかなりの量があります。これらを効率的かつ正確に処理するのも職員の力も見せ所です。

決算書類の作成

会計関係の部署では最終的に決算書類を作成します。決算書類はかなりの量があるため、役割分担をしながら準備を進めていくことになります。

私の大学でも3月~5月くらいまでは会計関係の部署もかなり多忙になっており、夜遅くまで電気がついていたり、休日に出勤している姿を見ることもあります。

会計関係の仕事は淡々と行うようなイメージもありますが、時期によっては体力も必要になるということは理解しておくとよいと思います。

企画・財務・会計の主な仕事まとめ

理事会や経営会議などで大学の大きな方針を決める場合は、それを決めることにより教員や職員にも大きな影響が出るため(新しい仕事が増えたりする)、そう簡単に決めることができません。

大きな方針を決めるためには決めるまでの学内の調整が重要になります。このような仕事するためには、人を説得する能力(資料作成能力・説明能力・コミュニケーション力、日頃の人間関係)が、非常に重要になってきます。

また、認証評価への対応については、色々な観点から評価をされることになるので大学全体に精通している必要があり、様々な教職員に対応の依頼を行う必要があります。

その中で先生方にお願いする場面もありますが、先生によっては「余計な仕事」と考えている人もいるため、何とか説得して対応してもらうようお願いするのが結構大変だったりもします。

予算、決算などの仕事は、時期によってはかなり集中して忙しくなるので、体力だけでなく精神力も必要になってきます。

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