大学職員の採用試験に合格するためには、仕事理解や業界研究を行う必要があります。そこで、現役大学職員である管理人が大学職員の「産学連携・研究支援の仕事」について解説します。
はじめに
大学職員を目指す人の中には、教務系や就職・キャリア支援系の業務に携わりたいという人が多いのですが、「産学連携・研究支援」系についても希望する人が増えてきている印象があります。これは企業と連携したPBL教育が求められるようになったり、教育だけでなく社会課題を解決する研究を実施していくことも大学の使命の1つであるという認識が広まってきているからだと思います。
また、新型コロナウィルスなど、社会や就業環境が大きく変化したことに伴い、これまで大学職員への転職を考えていなかった技術職や研究職で働いている方も、安定した職を求めて大学職員を目指す人が少しずつ増えてきていることもその要因だと思っています。
この記事で産学連携・研究支援に関する主な仕事を紹介しますので、仕事理解・業界研究に活用していただければと思います。
産学連携・研究支援の主な仕事内容の紹介
産学連携・研究支援の業務には、外部資金の獲得にかんする仕事や共同研究の手続き、知的財産の活用、研究成果の発信など様々なものがあります。
産学連携・研究支援をやりたいと考えている人は、どんな業務があるかをイメージしておくとよいと思います。
教員の外部資金獲得のための支援
教員が研究を進めていくためには、研究をするためのお金が必要になります。大学でも研究のために一定の資金を準備していますがそれだけでは足りない状況もあります。
そこで学術振興会などの様々な機関が特定の研究を進めるための補助金の公募を行っているので、大学職員としては、外部の研究資金を獲得するための情報提供などを行っています。
現在の大学は少子化などの影響により大学としての収入が減ってきている大学も多いので、大学の外から研究資金を獲得することは非常に大事になります。
単に情報提供を行うだけではなく外部資金の獲得を促すための戦略の検討や、外部資金獲得のためのイベント(応募申請書の書き方のポイント等)などを実施する大学もあります。
ただ、外部の資金の必要性は研究分野によっても異なります。例えば、文系の先生で学内の研究予算だけで十分な場合もあります。そのような場合でも、大学の方針としてできる限り外部資金の獲得に応募させようとした場合、予算はいらないのに不要な書類を膨大に作らなければならなかったりするなど、逆に研究環境を悪化させるような場合もあります。
このため、何がなんでも外部資金を獲得するというよりは、必要な額を必要だけで獲得しにいくということも重要かもしれません。
共同研究や受託研究の契約手続き
大学では民間企業などと合同で研究を進めることが多く共同研究や受託研究という形で研究を進める場合があります。
共同研究や受託研究などは研究がうまくいったときの権利に関することなど多くのことを事前に決めて契約をすることになっており、その契約手続きを行います。
このような契約を行うときは大学職員としては先生や先方の企業の担当者と連絡をとりながら、細かい調整を行っていく必要があります。
知的財産の管理や活用の視線
大学の先生が研究を進めていく中で特許の取得を目指すことになった場合は、特許取得のための手続きを行います。
内容はかなり専門的になってくるので大学職員の仕事しては、案件ごとにその分野の特許取得を得意とする弁理士さんと契約を結び、弁理士さんに特許取得のための書類を作ってもらったりします。
研究倫理への対応
研究を進めるうえでは倫理的な課題が発生することもあり、大学として研究を進めて問題ないかを判断したりする場合があります。
多くの場合は研究倫理に関する会議を設定し、何らかの基準に合致するものはその会議にかけ、大学の許可を得ることになります。
大学職員としてはこのような会議の準備・運営などを行ったりします。
研究成果の発信
大学では先生方が進めた研究成果を社会に発信していく必要があります。発信することで大学が社会にとって役に立つ組織であることをアピールしたり、大学の知名度向上にもつながっていきます。
このような研究成果を発信していく広報的な仕事も大学職員の仕事の1つとなります。広報と言うと入試に関するイメージが強いですが、研究成果を発信していくような広報も非常に重要になります。
研究の広報がうまくいき企業の目に留まることで新たな研究資金を獲得できたり、メディアに取り上げられることになれば、無料で大学の名前がテレビで使われることにもなります。
あまり注目される仕事ではないかもしれませんが、研究の最先端に触れることもできて非常に魅力のある仕事だと思います。
先生方の事務負担の軽減
最近は先生方の業務が多く、研究に充てる時間が足りなくなっていると言われてきています。このため、先生方の業務負担を軽減し、研究しやすい環境を構築していくことも求められています。
例えば、煩雑な事務手続きを簡素化したり、場合によっては先生方が担っていた業務の権限を職員に移すということも必要かもしれません。
大学によって色々とやり方がありますが、先生方が研究しやすい環境を構築することも必要になってきています。
企業等と連携した公開講座の企画・運営
公開講座といっても様々なものがありますが、企業や自治体などと連携して一般の方向けの公開講座を企画し、運営することもあります。
講座を実施するにあたっては自分の大学の先生に講師をお願いすることもあれば、企業の方にお願いをすることもあります。
公開講座は基本的には有料で行いますが、最近はなかなか参加者が集まらずうまくいかなかったり、大学によっては公開講座をやめてしまうところも出てきています。
大学職員としては教育や研究ではない分野であるので、かなり積極的に携われる部分でもあります。うまく運営をして大学の収入源とすることができれば、大学職員としての価値を高めることができると思います。
産学連携・研究支援の仕事まとめ
以上のように大きく分けると、研究支援に近いものと社会貢献に近いものがあります。
社会貢献に近い仕事として公開講座がありますが、この公開講座は大学の知名度向上を促すという視点と参加料をいただくことによる収入減という視点の2つがあります。
知名度向上の視点が強い場合は無料で公開講座を実施すればある程度参加者を集めることができ、その役割を果たすことができます。一方で収入源の視点を強くすると、一定の料金をいただくことになりなかなか人集めに苦労することも多くなってきます。
このため、大学によっては人集めがうまくいかず公開講座自体を少なくしてしまったり、やめてしまう大学も増えてきています。
また、公開講座は「大学が持っている知識の社会への還元」的な意味合いもあり、自分の大学の先生に講師をお願いすることも多いです(そのほうがお金がかからないということもある)。
しかし、大学の先生は公開講座の講師をやることによって研究の時間が減ってしまうという認識があったりして、快く引き受けてくれなかったりします。
大学職員としては、「なぜ、公開講座をやるのか」、「やる意味はあるのか」、「なぜその先生なのか」という先生からの質問に対して先生ごとに合わせた回答をし、説得する力が求められています。
産学連携・研究支援をやりたい人に気を付けていただきたいこと
近年の大学では、様々な専門職が増えてきており、その中でURA(リサーチ・アドミニストレータ)という研究支援の専門職を採用している大学があります。
このような大学は、研究支援の業務の一部分や大部分をURAの役割にしている場合もあり、そのような場合は一般の事務職員が関われない業務も出てきています。
なかなかURAと一般の事務職員の役割分担が明確ではないのですが、「産学連携・研究支援をやりたい」というときに、あまり限定して業務を書いてしまうと、「その仕事は一般の事務職員は担当することはない」と言われてしまう可能性もあるので、「産学連携・研究支援をやりたい」と記載する場合はあまり狭く書き過ぎないほうがよいと考えています。
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