【書評】大学関連書籍

「教えてみた「米国トップ校」」を読んだ感想・レビュー

大学職員として必要な知識や情報を蓄積するため、大学関連の書籍を読んでいます。

大学職職員を目指す方の就職・転職活動をするうえでは、大学の「業界研究」を行う必要があります。

そのときに、大学関連の書籍を探している人もいると思うので、ネタバレしない程度に参考に学んだことなどをお伝えしたいと思います。

今回は、「教えてみた「米国トップ校」」です。

書籍情報の紹介

■タイトル
 教えてみた「米国トップ校」

■著者名
 佐藤 仁

■略歴(書籍刊行当時)
 ・東京大学東洋文化研究所教授
 ・プリンストン大学客員教授

目次

第1章 総合人物評価の落とし穴
 ―「就活化」する入試の現実(市川海老蔵はハーバードに入れるか;東大を彩る変人たち等)

第2章 「白熱教室」の裏側
 ―問われる教育環境(教室は白熱しているか;教室は多様か等)

第3章 「会社化」する米国大学
 ―研究者の居心地を決めるもの(日本の大学は大リーグの二軍化するのか;給料は日本の国立大学の約2倍以上等)

第4章 やがて哀しきグローバル化
 ―非英語圏、日本にこそある多様性(明治期の東大はグローバルの最先端;東大を去る学生たち等)

第5章 米国トップ校から何を学ぶか
 ―強みを活かす改革五つの指針(大学の内と外;一体的な改革のために等)

この本を読んだ理由

・「オックスフォードからの警鐘」や「アメリカの大学の裏側」を読んで見て、引き続き海外の大学の状況について勉強したいと思い、この本を読んでみました。

・「アメリカの大学の裏側」と同じようなテーマになっていますが、著者が異なるので、それぞれがどのような部分で意見の違いがあるかについても見てみたいと思いました。

学んだことや感想

第1章 総合人物評価の落とし穴

<特に印象に残ったこと>
・アメリカと日本の入試制度を比較し、日本の制度の優れている点にスポットをあて、必ずしもアメリカの制度が優れているわけではないということはまさにそのとおりだと感じました。

・アメリカの大学の学費は、日本と比べると相当高いため、日本で同じような教育を提供するのは無理があるなとも感じました。

・アメリカの入試では卒業生が面接を行うケースがあり、それが卒業生の愛校心の醸成にもつなげていることは大変興味深かったです。

・アメリカの大学は高校時代の成績や課外活動を評価していますが、それにより、アメリカの高校生は、大学入試で評価されることを中心に考えて高校時代を過ごしてしまうという現状は、それはそれで問題があると感じました。

・日本の大学入試では、単なる学力試験だけではなく、人物を評価するような方向に進んでいますが、アメリカでの人物評価はこれはこれで課題があり、大学入試の難しさを改めて感じました。

・著者はアメリカの入試をそのまま日本に導入すべきでないとの立場に立っていますが、著者のおっしゃるとおり、今の日本の大学の状況では、導入による意義はそこまで高くないと感じました。

第2章 「白熱教室」の裏側

<特に印象に残ったこと>
・アメリカのTA(ティーチング・アシスタント)は、任される業務や位置づけが、日本のTAと異なることを初めて知りました。日本でも同じようにできるとよいと思いました。

・アメリカの大学の授業は課題が多く、学生は授業外の学習をかなりしていますが、それによるデメリットも示されていて、授業設計も奥が深いと感じました。

・アメリカのチームティーチングという授業方式が、日本でも取り入れられるようになれば、先生方の授業レベルも自然と上がってくるのではないかと思いました。ただ、日本では嫌がる先生が多くいそうですが。

・対話型の授業と講義型の授業を比較すると、前者のほうが優れていると思いがちですが、そう単純ではないことがわかりました。

・日本の大学の良さは「教員との距離の近さである」という意見は、私自身もそうあるべきだと思いましたし、もっとアピールすべきだと思いました。

第3章 「会社化」する米国大学

<特に印象に残ったこと>
・アメリカの大学も日本の大学も、教員を採用する際は、研究業績を重視するという点では同様の考え方だと感じましたが、アメリカの場合は、教員による待遇(給与や業務負担)が個人で異なるため、よい意味でも悪い意味でも、日本とは違うなと感じました。

・アメリカの教員は、ステップアップのために別の大学に転職することも少なくないようですが、既存の学生にとっては、学んでいた先生や有名な先生が急にいなくなってしまうリスクも高くなってしまうため、日本の流動性が低いシステムは、学生にとってはよいものだとも感じました。

・アメリカでは、教員を採用する際に、学生が参画して評価することを知り、日本でも導入の検討をすべきだと思いました。

第4章 やがて哀しきグローバル化

<特に印象に残ったこと>
日本の優秀な高校生の第一希望はアメリカのトップ校で、滑り止めとして東大を受験している層がいるということは、もうそういう時代が始まったんだなと改めて感じました。

・また、両方合格した学生は、4月に東大に入学し、9月までに東大を退学して、9月からアメリカの大学に入学する学生がいるというのは驚きました。

・アメリカの大学では、学生の大学での満足度が高く、それもあってアメリカから海外の大学に留学する学生が増えないとの記載がありましたが、これは日本にも当てはまるのではないかと思いました。日本人学生が海外大学への留学を行わない理由は、単に日本人特有の性格だけが要因ではないと思いました。

・著者の「本当のグローバル化とは何か」に対する指摘は、まさにそのとおりだと思いました。

・日本の価値を知るには、日本を出ないとわからない(海外に行かないとわからない)ということも、そのとおりだと思い、日本の良さを知るために、一定期間海外に行くことは重要だと感じました。

第5章 米国トップ校から何を学ぶか

<特に印象に残ったこと>
・著者が指摘している日本のトップ校の問題点は、大学職員としてしっかりと認識し、自分なりの考えを持たなければならないと思いました。

・指針1に示されている提案は、個人的にはなかなか難しいと思いましたが、他の大学職員の意見も聞いてみたいと思いました。

・指針3については、まさに大学が進めるべきものだと感じ、自分が勤務する大学でも提案していきたいと思いました。

・指針5に示されてる「心の開国」と言う言葉は、よい言葉だと感じました。

・著者が示している日本のトップ校が守るべき3つの強みは、まさにそのとおりだと感じました。

合わせてチェック

大学職員を目指す方へのオススメポイント

この書籍はアメリカで授業を行った経験から、アメリカの制度と日本の制度を比較し、説明をしています。

文部科学省は様々な分野で、アメリカの制度を導入させようとしてきますが、単にこれに従うのではなく、各大学が、各大学の判断で、本当にやるべきことを考えなければならないということがわかります。

全体的にわかりやすく、さらっと読みやすい本なので、大学職員を目指す方にもぜひ読んでいただきたい書籍です。

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