大学職員として必要な知識や情報を蓄積するため、大学関連の書籍を読んでいます。
大学職職員を目指す方の就職・転職活動をするうえでは、大学の「業界研究」を行う必要があります。
そのときに、大学関連の書籍を探している人もいると思うので、ネタバレしない程度に参考に学んだことなどをお伝えしたいと思います。
今回は、「消えゆく限界大学-私立大学定員割れの構造」です。
書籍情報の紹介
■タイトル
消えゆく限界大学-私立大学定員割れの構造
■著者名
小川 洋
■略歴(書籍刊行当時)
・埼玉県立高校教諭(社会科・地歴科)として勤務し、並行して国立教育研究所(現・国立教育政策研究所)研究協力者として日本の高校教育とアメリカやカナダの中等教育との比較をテーマに研究。
・その後、私立大学に移り、教職課程担当の教員として十数年勤務
目次
第1章 試練に立たされる弱小私大
第2章 どのような大学が定員割れしているか
第3章 混乱の「ゴールデンセブン」とその後
第4章 短期大学とは何か
第5章 短大以上・大学未満
第6章 新たな大学像
第7章 弱小私大と高校
第8章 弱小私大の生き残る条件
第9章 「限界大学」の明日
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この本を読んだ理由
- 近年の大学では、18才人口の減少等により、すべての大学が将来的に生き残っていくのは厳しい状況にあると言われています。
- また、大学の学校数が、以前よりも増えたこともその原因とされています。
- そのような状況で、少しずつ閉校(募集停止)になる大学も出てきています。
- 私自身も大学職員であり、将来的に働く場がなくなってしまうようなことは避けたいと考えています。
- そこで、どんな大学が閉校(募集停止)となっていってしまうのかという部分を知りたいと思い、この本を読んでみることにしました。
学んだことや感想
第1章 試練に立たされる弱小私大
第1章では、「消えた大学」、「消える大学-定員割れのメカニズム」について記載されています。
<特に印象に残ったこと>
- 大学が閉校になる場合は、合併、募集停止(大学のみ廃止し他の学校の運営は継続)、法人の解散、公立大学化など、色々なパターンがあることを知りました。
- 受験者が数万人いる人気大学であっても、合格者に対する入学率は20%以下となっているケースがあることを初めて知りました。
- 一度、一定の率以下の定員割れとなってしまった場合、過去のデータから見ても、そこから学生募集を回復させることはかなり難しいことがわかりした。
- 定員割れとなっている大学数の推移についての説明があり、かなり厳しい状況になってきていることを理解しました。
第2章 どのような大学が定員割れしているか
第2章では、「定員割れの定義」、「定員割れ大学の分析視点」、「定員割れ大学の現状」について記載されています。
<特に印象に残ったこと>
- 大学を設置時期別に区分したうえで、定員割れの傾向を分析しているので、設置時期と定員割れの関係を理解することができました。
- 地理的な観点からも定員割れを分析しており、一部の都道府県では、私立大学(芸術・宗教系を除く)の40%以上が、定員割れとなっているのは驚きでした。
第3章 混乱の「ゴールデンセブン」とその後
第3章では、「臨時収入」、「臨時定員の設定」、「ゴールデンセブン後の高校生の進路選択」、「既設大学の改革」、「女子大学の拡張戦略」、「短期大学のゴールデンセブン」、「撤退か転進か」について記載されています。
<特に印象に残ったこと>
- 過去に、通常の定員に加えて臨時的に定員を増やすことのできる「臨時定員」を設定していた時代があっはたことを初めて知りました。
- 関東の大学と関西の大学では、定員の増やし方に違いがあるのはすごく興味深かったです。
第4章 短期大学とは何か
第4章では、「「当分の間」の措置としての短期大学」、「短大の変遷」、「短大の恒久化」、「昭和四十年代の拡大と性格の変化」、「夏の時代から冬の時代へ」、「消えた短大」、「四大化へ」について記載されています。
<特に印象に残ったこと>
- 短期大学の歴史的な背景と、短期大学がどのように4年制大学やや廃校になっていったかが理解できました。
- 短期大学の分野別学生数の変化がグラフでしめされており、過去との違いが明確でびっくりしました
第5章 短大以上・大学未満
第5章では、「四大への移行」、「「幸せな死に方」としての四大化」、「定員割れの短大から定員割れする大学へ」、「学生募集の限界」、「「限界大学」の大量出現」について記載されています。
<特に印象に残ったこと>
- 短期大学から4年生大学化した学校のその後の学生募集の分析は、すごく興味深いものでした。
- 短期大学から4年生大学化した大学の教員の多くは、もともとは短期大学の教員だったということについては、教育の質やレベルよりは、教員の雇用を優先しているということで、それは今も昔も変わっていないと感じました。
- 大学でも、高校の「特別進学クラス」のような優秀な学生を選抜したクラスがある大学があることを初めて知りました。
第6章 新たな大学像
第6章では、「総合大学への飛躍-武蔵野大学」、「計画的キャンパス開発-目白大学」、「教員組織の刷新-名古屋外国語大学」、「地域に根差す小規模大学」、「公立大学問題」について記載されています。
<特に印象に残ったこと>
- 武蔵野大学、目白大学、名古屋商科大学、共愛学園前橋国際大学などの大学改革事例が紹介されていて、大変勉強になりました。
- 共愛学園前橋国際大学は、様々な場で、大学改革の成功事例として紹介されていますが、改めてその内容を確認することができました。
- 大学の公立化の問題も指摘しており、著者の主張は初めて聞いたものでしたが、まさにそのとおりだと思いました。
第7章 弱小私大と高校
第7章では、「バブル崩壊後の進路選択」、「大学進学率予測」、「高校側の事情」、「多様化校と弱小私大の募集活動」について記載されています。
<特に印象に残ったこと>
- 高校生の特性を性質別に分け、どのような層が大学進学を目指すのかということが理解できました。
- 高校生の卒業後の就職事情について、以前と比べると厳しくなってきていると感じました。
- 高校生の就職環境が厳しくなると、進学の圧力が強くなり、就職環境が好況になると、進学者が減るというのは、大学と大学院の関係に似ていると思いました。
第8章 弱小私大の生き残る条件
第8章では、「大学不滅神話の崩壊」、「地域の信頼を得る」、「入学前教育と初年次教育の充実」、「ターゲットを絞った学生募集」、「短大文化の清算-教育・研究の活性化」、「安直な道を避ける」、「経営体制の刷新」について記載されています。
<特に印象に残ったこと>
- 大学が存続するための1つの方策として、「地域社会に支持される」という主張はまさにそのとおりだと思いました。
- 初年時教育の重要性と負荷をかける教育の必要性はまさにそのとおりだと思いました。
- 将来的に厳しい大学を見分ける基準として、留学生比率を見るという方法は、それなりに信頼できると思いました。
- また、外からはなかなか見えにくいですが、理事会の体制も、危険な大学を知る1つの指標になると思いました。
第9章 「限界大学」の明日
第9章では、「「限界大学」とは」、「文科省の動き」、「破綻への備え」について記載されています。
<特に印象に残ったこと>
- 著者が示している将来的に退場の可能性のある3パターンの特性は、納得のいくものでした。
- 特に2つ目のパターンは、今がよくても、近い将来はたしかに厳しい状況になると感じました。
大学職員を目指す方へのオススメポイント
- 将来的に厳しくなる大学業界の中で、特にどのような大学が閉校になる可能性が高いかをわかりやすく説明しています。
- 大学職員を目指す方にとっては、採用試験を受ける大学が、将来的に閉校(募集停止)とならないかという点は、重要な部分だと思います。
- これから大学職員を目指す方にとっては、就職先を選ぶ指標にも使えるため、ぜひ大学職員になる前に読んでいただきたいと思います。
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