分野別特色ある取組

【大学職員業界理解】大学における各分野の特色ある取組(学生支援編)

大学職員の採用試験に合格するためには大学の業界研究も重要になります。業界研究をしっかりと行うことでエントリーシート等の応募書類を作成しやすくなったり、小論文試験やグループディスカッション、面接試験でも自分なりの考えを提案できるようになります。そこでこの記事では「学生支援」に関する各大学の特色ある取組を紹介します。

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はじめに

現在の大学では経済的な支援が必要な学生、メンタル的なサポートが必要な学生、障害のある学生など多様な学生が在籍しています。大学としてはこのような学生に対してもできる限りのサポートを行い、退学を事前に防いだり、各学生が活き活きと大学生活を送れるようにしてく必要があります。

また、大学では単に教育を提供するだけでなく、様々な経験や体験ができる環境を創出し、学生の成長を促していく必要があります。

大学職員への就職・転職を目指す方の中には、自分自身が大学時代に丁寧なサポートを受けたことや、大きく成長できたことなどから「学生支援の仕事に携わりたい」という人も多くいます。

そこでこの記事では、大学職員への就職・転職を目指す方の業界研究・試験対策の参考になるように、大学の「学生支援」に関する取組を紹介します。

学生支援については、

①経済支援に関する取組
②新入生を歓迎するためのイベント
③学生生活の満足度を高める取組
④退学者を未然に防ぐ取組
⑤学生の起業を促進する制度

の5つのカテゴリに分けて紹介します。

①経済支援に関する取組

「学生支援」の「経済支援」に関する特色ある取組については、

・社会課題を解決する学生に給付型奨学金(東京学芸大学)
・初めて4年制大学に進学する「ファーストジェネレーション」に奨学金を給付(東京工業大学)
・国際学会で発表する際の渡航費を補助(青山学院大学)

の3つの事例を紹介いたします。

社会課題を解決する学生に給付型奨学金(東京学芸大学)

東京学芸大学は、社会課題の解決に関心がある教育学部2・3年生を対象とした給付型奨学金「インソース社会人・生涯教育奨学金」を創設しています。

この奨学金は、多様な社会課題が表面化し、新たな解決方法や教育手法を創造できる人材の養成が求められている中で、産官学の協働的な取組を通じて、教育におけるイノベーションを進めたいとの思いから創設されたものとなっています。

選考は、民間企業と共催する講座の受講したうえで、レポートの提出により行うこととなっています。

採用人数は、1年につき20人で、給付額は1人20万円となっています。

初めて4年制大学に進学する「ファーストジェネレーション」に奨学金を給付(東京工業大学)

東京工業大学は、2020年4月から学士課程に入学する「ファーストジェネレーション」の新入生に、月5万円の奨学金を給付することを発表しました。

「ファーストジェネレーション」とは、一般的に家族の中で初めて大学に進学する世代のことを呼びます。

具体的な要件としては、親が4年制の大学を卒業しておらず、学業成績が特に優秀で、学業の発展向上が期待できること、本人が属する世帯の税込年収が一定の額未満であることなどが条件となっています。

国際学会で発表する際の渡航費を補助(青山学院大学)

青山学院大学では、グローバル教育の支援や研究意欲の向上を目的として、学生が国際学会発表のための海外に渡航する際の、渡航費補助を行う「国際学会発表支援制度」を新たに創設しました。

具体的には、国内開催の学会においては7万円を上限に、国外開催の学会においては15万円を上限に、合わせて最大60名に対して旅費の支援を行うこととしています。

②新入生を歓迎するためのイベント

「学生支援」の「新入生を歓迎するためのイベント」に関する特色ある取組については、

・新入生のためのガーデンパーティの開催(清泉女子大学)
・「新入生歓迎の集い」の開催(関西大学)
・大学生活スタートアップセミナーを開催(成城大学)

の3つの事例を紹介いたします。

新入生のためのガーデンパーティの開催(清泉女子大学)

清泉女子大学は、新入生歓迎のための学生主催のガーデンパーティを開催しています。

このイベントは、毎年恒例のイベントで、クラブ団体による展示・ステージ発表・模擬店が楽しめることになっています。

また、清泉女子大学が包括提携協定を締結している鹿児島県の新茶とお菓子のセットが100円で楽しめる「百円茶屋」や同県の物産販売コーナーなども設けています。

新入生だけでなく、卒業や在学生、その家族以外も入場が可能となっているのも特徴となっています。

「新入生歓迎の集い2019」の開催(関西大学)

関西大学では、2019年4月から下宿する新入生を対象とした大学生活スタートダッシュ促進企画「新入生歓迎の集い2019」を開催しました。

このイベントは、下宿を始める新入生の仲間づくりを行うことを目的に、たこ焼きパーティーなど大阪文化を駆使したおもてなしで新入生を歓迎することしています。

また、学生支援等を目的とした「学修コンシェルジュ制度」を試験的に導入し、4年間の学生生活をサポートすることとしています。

大学生活スタートアップセミナーを開催(成城大学)

成城大学は、2019年4月入学予定者に向けた「入学準備プログラム」として、大学生活スタートアップセミナーを開催しました。

このプログラムは、大学をよりよく知っていただくとともに、新生活への不安や疑問を解消してもらうことを目的に実施しているもので、経済学部と文芸学部の指定校推薦・AO入試合格者を対象に行われました。

具体的には、「自己理解」、「他者理解」、「チームビルディング」を中心としたワークを実施し、参加者からは「入学後が楽しみになった」、「最初は不安だったが、友達ができてよかった」などの感想がありました。

③学生生活の満足度を高める取組

「学生支援」の「学生生活の満足度を高める取組」については、

・キャンパス内にイタリアンレストランをオープン(聖心女子大学)
・期間限定で朝食無料サービスを実施(白鷗大学)
・大学スポーツイベント「The Ivy Match」を開始(青山学院大学)
・毎年の授業最終日に「お雑煮会」を開催(横浜美術大学)
・在学生からの質問に24時間対応するチャットボットオプションの運用開始(大阪経済大学)

の5つの事例を紹介いたします。

キャンパス内にイタリアンレストランをオープン(聖心女子大学

聖心女子大学は、表参道の人気レストラン「RISTORANTE DA FIORE」の眞中秀幸シェフがプロデュースしたイタリアンレストラン「La Mensa jasmin」(ラ・メンサ ジャスミン)をオープンしました。

このレストランは学生だけでなく、学外の一般の方も利用できるようになっています。

特徴として、農薬や化学肥料などを使用しないBIO食材や生産者から直送された野菜などをベースにし、地球にも健康にも優しい美味しい料理・飲物で、安心して楽しめるカフェレストランとなっています。

期間限定で朝食無料サービスを実施(白鷗大学)

白鷗大学は、授業開始日の2019年4月8日(月)から26日(金)までの間、「朝食無料サービス」を実施しました。

この取組は、学生に規則正しい生活習慣を身につけて、生活サイクルを朝型に変えてもらうことを目的として毎年行っているもので、今年で20回目となります。

期間終了後の5月7日(火)からは、年間を通して1食100円で提供することになっています。

大学スポーツイベント「The Ivy Match」を開始(青山学院大学)

青山学院大学では、株式会社電通と連携し、「学生が自ら大学を応援する」文化の研究の一環として、新しい大学スポーツイベント「The Ivy Green Match」(以下、アイビーグリーンマッチ)を開始しました。

青山学院大学では、学生による大学スポーツの観戦や応援経験は31.4%に留まっていることを踏まえ、学生による一体感の醸成と大学への帰属意識の向上を図るため、大学スポーツをイベントとして演出し、観戦や応援経験を一気に引き上げるアイビーグリーンマッチを企画したとしています。

具体的には、観戦者全員にビブスを配布したり、会場全体をスクールカラーと同色の濃緑(Ivy Green)にカラーリングすること、プロ仕様の設営・演出を導入すること、NCAA(全米大学体育協会)並みのイベント空間を創造することなどの取組を行い、大学スポーツに新たな魅力を付加することとしています。

毎年の授業最終日に「お雑煮会」を開催(横浜美術大学)

横浜美術大学では、毎年、授業の最終日に、「お雑煮会」を開催しています。

お雑煮会は、日々制作に励む学生たちと教職員が共に温かい食事をしながら歓談する好機会となっています。

在学生からの質問に24時間対応するチャットボットオプションの運用開始(大阪経済大学)

大阪経済大学は、在校生からの “よくある質問”に24時間自動で回答する「LINE公式アカウント・スクールプレミアチャットボットオプション」の運用を開始しました。

この取組は、学生対応を行う事務部署において、大学ホームページで開示されている情報に行きつかず窓口に質問に来る学生が多くいることを踏まえ、学生からの質問への応答や学内情報の公開などを一元的に行っていくものです。

これにより、学生は窓口に来なくても昼夜を問わず疑問点を解消することができ、学生対応部署の業務の削減や時間の有効活用につなげることができるとしています。

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2024年10月時点では、以下の大学の情報を掲載しています。
秋田公立美術大学、大妻女子大学、追手門学院大学、桜美林大学、香川大学、学習院大学、神奈川大学、関西大学、関西学院大学、神田外語大学、北九州市立大学、九州工業大学、共愛学園前橋国際大学、京都光華女子大学、金城学院大学、慶應義塾大学、高知大学、国際基督教大学、国士館大学、滋賀県立大学、実践女子大学、淑徳大学、順天堂大学、常翔学園(大阪工業大学・摂南大学・広島国際大学)、上智大学、成蹊大学、成城大学、西南学院大学、玉川大学、多摩美術大学、千葉大学、中央学院大学、津田塾大学、東京医科大学、東京造形大学、東京電機大学、豊田工業大学、名古屋市立大学、福岡教育大学、福岡工業大学、福岡女子大学、藤田医科大学、星薬科大学、武蔵大学、武蔵野大学、明海大学、明治薬科大学、名城大学、ものつくり大学、山口県立大学、横浜市立大学、立命館大学、琉球大学、早稲田大学

④退学者を未然に防ぐ取組

「学生支援」の「退学者を未然に防ぐ取組」については、

・ピアサポート制度を導入(京都橘大学)
・早期支援システムを実施(北九州市立大学)
・学生何でも相談員を設置(長崎大学)
・「指導グループ」による中途退学防止への取組を実施(星薬科大学)

の4つの事例を紹介いたします。

ピアサポート制度を導入(京都橘大学)

京都橘大学では、新型コロナウイルスの影響により、例年以上に不安感を抱いている新入生が多いことや、2~4年生についてもアルバイト収入が減少していることなどを踏まえ、学生によるピアサポート制度を導入しました。

この制度では、2~4年生がピアサポーターとなり、新入生の様々な疑問や悩み、不安について、オンラインで相談に応じていくものです。

ピアサポーターには合計で221人が登録されており、サポーター1人あたり5~7人程度の新入生を担当することになっています。

なお、サポーターは大学が作成した研修ビデオによる研修を受けることになっています。

早期支援システムを実施(北九州市立大学)

北九州市立大学では、学生が授業内容の理解困難などの様々な理由による長期欠席などを引き金にして、引きこもりや休・退学に陥ることを未然に防止するために、大学全体で組織的に支援する「早期支援システム」を実施しています。

具体的には、各学部が事前に選定したセンサー科目(大学が指定した科目)において授業を受け持つ教員が出欠の確認をし、理由もなく3回欠席した学生に対して、学生相談室が電話等で呼び出しを行い、教員と学生相談室が面接指導を行うものです。

大学では、学生が抱える問題を「①生活」「②修学」「③進路」「④健康」「⑤心理」「⑥その他」に分け、学生と一緒に問題を解決することを基本に必要な支援を行っています。

学生何でも相談員を設置(長崎大学)

長崎大学では、学生のあらゆる相談に一元的に対応できる「学生何でも相談員」を各学部に設置し、学生が勉学や交友関係、異性問題、経済問題、就職・進路問題、人生観、家族関係、身体的不調など、様々な問題の相談ができる体制を整えています。

学部によっては保護者との連携を積極的に行い、成績送付や、面談の設定などを通して、成績不振による留年や中退を未然に防ぐ努力を行っています。

「指導グループ」による中途退学防止への取組を実施(星薬科大学)

星薬科大学では、教員と学生との親睦と意思の疎通をはかり、学生の修学指針及び生活面に関する指導、助言等を容易にすることを目的に、通称「指導グループ」と呼ばれている制度があります。

この指導グループは、専任講師以上の教員が、1学年4~7名の学生のサポートを担当します。

大学では、このグループに対して学生数に比例して毎年一定額(8,000円/1人)の補助活動費を支給し、学生のサポートをしやすい体制を整えています。

指導グループの具体的な活動としては、学生生活・成績等の相談だけでなく、父母を交えての懇談会や新入生歓迎会、会合、会食、小旅行、スポーツ、送別会など、グループに合った活動を適宜実施しています。

⑤学生の起業を促進する取組

「学生支援」の「学生の起業を促進する取組」については、

・学生の起業を支援する「起業部」を発足(香川大学)
・スタートアップビジネスコンテストの開催(東北大学)
・起業経営に携わる卒業生の交流イベントを開催(大阪学院大学)

の3つの事例を紹介いたします。

学生の起業を支援する「起業部」を発足(香川大学)

香川大学は、学生の新規事業設立を支援する「起業部」を発足させることを発表しました。

起業部では、学外の企業の経験や実績のある方などに学びながらビジネスモデルの発案や資金調達を実施することとしています。

副顧問として、香川大大学院地域マネジメント研究科の徳倉康之特命准教授が任命されており、「1円を稼ぐ大変さを知れば、起業に至らなくても社長の右腕として期待される人材になれる」と成長に太鼓判を押しています。

スタートアップビジネスコンテストの開催(東北大学)

東北大学は、約50社ある大学発スタートアップを2030年までに100社にする目標を掲げていることなどを踏まえ、大学発スタートアップによるビジネスプランコンテストを開催しました。

当日は、書類審査を通過した学生や教職員など8人が、研究成果を応用した事業計画などを発表することになっています。

審査は、大学教授や経済団体幹部などの審査委員と質疑応答を行い、実現可能性や市場性などについて評価を受けます。

優勝者には、事業展開で必要な旅費などの経費として最大50万円と協賛各社から副賞が贈られます。

起業経営に携わる卒業生の交流イベントを開催(大阪学院大学)

大阪学院大学は、企業経営に携わる卒業生を主な会員とした「大阪学院フェニックス倶楽部」を設置しています。

この団体は、会員相互の交流を通じてここの事業や母校の発展に寄与することを目的に2009年7月に設置されたものです。

現在は、学生支援を目的としたビジネスノウハウや心構えを学ぶ「社長直伝プログラム」や将来に事業を始めたい学生に向けた「開業指南プログラム」、「後継者育成プログラム」などの開催も行っています。

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各分野の特色ある取組を紹介している記事について

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