今回は、地方の国立大学への転職を目指すFさんからの相談事例の紹介です。
Fさんからは面接試験に向けて、首都圏の国立大学と地方の国立大学の良い点・課題について質問がございました。
具体的な質問内容
地方の国立大学への転職を考えております。
今後、面接試験を控えているのですが、国立大学の良い点・課題について説明する予定です。
それを考えるうえで、首都圏の国立大学と地方の国立大学の違い(良い点・課題)について知りたいのですが、教えていただくことはできますか。
質問に対する回答
地方国立大学の良い点、地方国立大学の課題、首都圏国立大学と地方国立大学共通の課題に分けて回答させていただきます。
なお、課題についても、考え方によっては良い点に変わる場合もあるので、それぞれについてご確認いただき、自分なりに改めて良い点・課題についてお考えいただければと思います。
地方国立大学の良い点
大学経験面での良い点と学生目線での良い点について記載いたします。
存在意義を確立しやすい(大学経営面での良い点)
首都圏では、国立大学だけでなく多くの私立大学が存在しています。
国立大学には、私立大学よりも相対的に多額の税金が活用されているため、首都圏の国立大学は常に「多くの同分野の私立大学ある中で、存在し続ける意義(存在意義)」について問われ、それを説明していく必要があります。
一方で、地方の国立大学では、大学が存在すること自体が地方の活性化に貢献すること、首都圏の国立大学よりも地域と連携がしやすく地域貢献がしやすいこと、地域貢献をすることでさらに大学の存在意義を確立できることが良い点だと考えられます。
教育・研究環境を整備しやすい(学生目線での良い点)
地方の国立大学では、大学の周辺に娯楽施設が少ないと考えられるため、学生が集中して教育を受け、勉強をする場としては首都圏大学よりも優れていると考えられます。
また、研究活動を推進していくためには、研究を行うスペースや研究機器を設置するスペースが必要になり、首都圏の国立大学と比較すると、地方の国立大学のほうが敷地面積的に余裕がると考えられるので、教育・研究環境を整備しやすいという点では、地方の国立大学のほうが有利になると考えられます。
地方国立大学の課題
18歳人口の減少、外部資金、統合のリスクの観点から記載させていただきます。
18歳人口の減少
これは様々なところで言われているところもありますが、日本全体の18歳人口が減少し、特に地方ではその現象の幅が大きいとされています。
文部科学省の中央教育審議会の中でも2040年の人口シミュレーションの資料が出されたりもしていますが、厳しい地域では18歳人口が約25%減少するとされています。
そのような状況で、大学の質を保つためには、社会人や留学生の受け入れを増やすことも考えられますが、留学生を受け入れるためには大学内の施設や資料を英語化する必要があったり、社会人については現状ではなかなか高い授業料を払って昼間の時間帯に大学に入学するということは難しいと考えられます。
また、入学定員を少なくして大学の質を保つという考え方もありますが、大学の収入が減少することで、これまでの教育研究が行えなくなり、逆に、大学側が質を落としてしまうような状況になってしまうかもしれません。
いずれにしても、現時点で完璧な対応は難しいと考えられますが、他の大学にない魅力的な大学を創っていくことが少なくても必要になると思うので、戦略的な大学運営を行っていく必要があります。
研究資金や寄附金等の外部資金が集めにくい
地方の国立大学では、首都圏の国立大学と異なり、連携できる産業や企業が少なくなってしまうことから、研究資金や寄附金などの外部資金を集めにくいという課題があります。
このため、国の運営費交付金に頼らざるを得ない傾向があります。
一方で、卒業生からの寄附金については、全国的には年々減少傾向にあるとされていますが、大学や地域を好きになってもらうことや、戦略的な寄附金獲得に向けた取組を推進することで、その課題の解決を進めることができる可能性もあります。
また、地方の国立大学のほうが1つの企業との結びつきが強いと考えられるので、そういった視点からは逆にメリットになる場面もあるかもしれません。
国立大学の法人統合のリスク
これは必ずしも「課題」になるのか、さらによい大学になるための「メリット」になるのか難しいところですが、現在の文部科学省の方針としては、地方の国立大学の法人の統合を促しており、長期的には近隣国立大学や、場合によっては私立大学との法人統合がなされる可能性があります。
現在でも、北海道の3つの大学(小樽商科大学・帯広畜産大学・北見工業大学)、愛知県の2つの大学(名古屋大学・岐阜大学)、静岡県の2つの大学(静岡大学・浜松医科大学)で法人統合の議論がなされています。
法人統合は、経営母体が1つなり、複数の大学の運営を行うというもので、大学自体はそのまま残ることも想定されていますが、規模が大きくなることにより、意思決定に時間がかかったり、全体の予算が少なくなり、各大学に配分される予算が少なくなっていくということが考えられます。
また、社会的には「大学が多すぎる」との指摘もなされており、長期的には大学自体の統合(複数の大学を1つの大学にする)も考えられます。
そのような場合、重複する学部や機能は整理・統合する必要が生じるため、不要な人員を整理解雇するか、難しければ教職員の人件費を削減する必要が出てくる可能性があります。
そうなると、組織によい人材が集まらなくなり、負のスパイラルに陥ってしまう可能性があります。
国立大学共通の課題
これは首都圏国立大学も地方国立大学も同様になりますが、国立大学は他の公立大学や私立大学よりも文部科学省の影響を強く受ける立場にあります。
文部科学省は社会に対して、大学が社会に貢献していることを説明する責任があり、大学に対して多くの改革を求めるようになってきています。
国立大学では、予算を獲得するためにも文部科学省の意向に沿うように動く傾向があるので、現状では常に改革をし続けている状況にあります。
もちろん改革を進めることは悪いことではないのですが、大学のキャパシティを超えて改革を進めているケースも多く、組織が疲弊し、本来の教育や研究にしっかりと時間を使えないような状況にもなってきています。
それによって、改革のために教育の質が下がったり、研究がうまく進まなくなってしまうと本末転倒になってしまいますので、文部科学省の意向を踏まえつつ、大学としては、「本当にやるべきこと」を判断しながら大学運営をしていく必要があります。
最近は、「改革疲れ」などと言われるようになり、改革をやり過ぎることのデメリットも指摘されてきていますが、国立大学としてはなかなか対応が難しいところもあるようです。
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