現在、多くの大学では、日本人学生の海外への留学を増やしていきたいと考えているところですが、なかなかうまくいかないなぁと思うことについて述べさせていただきます。

グローバル人材が求められるようになってきている

大学の使命の1つとして、「人を育てる」という面があります。

これは、社会で活躍できる人材を育成するということで、企業が求める人材を育成するための教育を行っていくことが求められているということにつながると思います。

企業がどんな人材を求めているかについては、チャレンジ精神やコミュニケーション力、リーダーシップ力など、様々な能力を求めていますが、その中の1つに語学力があります。

もちろん、語学力だけあればよいというわけではないのですが、留学して語学力のある学生は、就職活動でも一定の評価がされるし、そもそも留学をしたということ自体も大きな魅力になっていると思います。

また、日本の国(政府)としても、平成23年には約6万人弱であった、日本人の海外への留学数を平成32年には12万人まで増やすという目標を掲げています。

このように、学生に留学を促すことで、社会や企業が求める人材を輩出することができること、また、国(政府)の方針とも合致するため、多くの大学では、日本人の海外への留学数を増やす取組を行ってきています。

大学が進めるグローバル化への対応

では、大学の現場では具体的にどのような取組を行っているかというと、

  • 語学の授業だけでなく、授業以外で語学が学べる講座を設置する
  • 留学経験者の先輩とコミュニケーションがとれる機会を創出する
  • いくつかの授業を英語のみで実施する
  • 超短期の海外留学プログラム(1週間程度)を設置し、海外への興味を持つように促す
  • 海外での学生の安全管理体制を強化する(専門業者に委託するなど)
  • などの様々な取組を行い、日本人学生の留学するためのサポートを行ったり、留学への意欲を促すための取組を行っています。

    また、大学によっては、一定の期間、留学することを必修化し、留学しなければ卒業できないようなプログラムを設計する大学もあります。

    このような留学に向けての学生のサポートを考えたり実行したりする仕事については、大学職員が大きく関わることができる部分になるので、大学職員としてはやりがいのある仕事であり、大学職員の魅力の1つだと思います。

    しかし、大学が様々な取組を行って、学生の海外留学へのモチベーションを上げたとしても、モチベーション以外に様々なハードルがあるため、なかなか留学者が増えないところもあります。

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    海外への留学の難しさ

    私の大学でも、そんなに多くはないのですが、海外への留学を目指すが学生が増えてきており、その中でなかなか難しいなぁ(簡単に留学を進めることはできないなぁ)と思うことを述べていきます。

    留学の難しさはお金の問題がある

    まずは、お金の問題です。

    というか一番の大きな問題です。
    海外に留学するとなると、多くの場合は、海外の大学で授業を受ける形が多くなります。

    そうすると、海外の大学に学費を納めることになるのですが、これがかなり高額と言われています。

    ざっと、インターネットで調べてみると、年間で数百万円かかるところが多くあります。

    いくつか教育費が安いという国もあるようですが、私が接してきた学生が目指している留学先を見ると、やはり授業料の高い国が多いように感じています。

    また、「交換留学」といって、海外のA大学の学生を日本の大学で受け入れて、その大学に本学の学生を留学させるという形もあり、この場合は、日本の大学の学費を払っていれば、海外のA大学への学費を払わなくてよいというものなっています。

    このため、「交換留学」という制度を使って、留学することができれば、学費という点では、一定程度の負担を抑えることができます。

    しかし、この場合も、日本の大学への学費のほかに、滞在先での家賃や生活費などがかかってしまうので、お金の負担は大きくなってしまいます。

    私の大学では、かなり多くの学生が、通常の学費や生活費を賄うために日本学生支援機構からお金を借りていたりもするので、もともとお金に余裕のない学生にとっては、留学というのはなおさら金銭的なハードルは高くなってしまいます。

    また、「交換留学」については、日本の大学に来たいという学生がいる国(大学)であることが前提になります。

    しかし、日本に留学に来る多くの留学生は、中国、韓国、タイ、ベトナムなどのアジアの学生がほとんどで、逆に、日本人学生の留学を目指す国は、アメリカ、カナダ、ヨーロッパが多いので、うまく交換留学の形がとれなかったりします。

    日本の人気大学でも、アメリカ、カナダ、ヨーロッパから多くの留学生を受け入れことは難しいようなので、地方の大学や都内でも中堅以下の大学だと、交換留学というのはなかなか難しいという状況もあります。

    いずれにしても、お金の負担はかなりあるので、まずは、お金のハードルが大きいことが気になっています

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    留学の難しさは失業と就職活動の関係がある

    2つ目は、「卒業と就職活動の関係」です。

    日本人の多くの学生(特に文系)は、4年間で卒業して、就職をするということを考えている学生が多いです。

    これは、金銭的にも、4年間分の学費・生活費しか負担ができなかったり、入学した友達と一緒に卒業したいという思いがあったりと色々な要因があると思います。

    実際に学生と接していても、4年間で卒業して、就職したいという学生が多いです。

    ここで、学生がどの時期に留学しているかを考えてみると、パターンとしては、
    ・大学3年生の秋~4年生の春にかけて
    ・3年生の冬から4年生の秋にかけて
    というパターンが多いように感じています。

    もちろん、4年間で卒業するには、指定された単位を取得する必要がありますので、留学を目指す多くの学生は、3年生の前期までにできるだけ卒業に必要な単位を取得し、かつ、留学のための語学の勉強をすることが多いです。
    (留学中の海外の大学で取得した単位については、一定の要件を満たせば日本の大学の単位として認められます。)

    そして、3年生の秋や冬から留学に行くことになるのですが、日本の就職活動は、3年生の冬から就職サイトに登録したりして、就職活動本番の準備に備えていきます。

    そして、4年生の4月には各企業の説明会に出席して、6月からは面接を受けていくことになります。

    これが、標準的な就職活動のスケジュールになるのですが、実際には4月前から企業説明会を行う企業もあったりするので、さらに前倒しで準備をする必要があります。

    そうすると、留学に行っている期間に、就職活動が本格化していて、留学から帰ってくる頃には、就職活動に出遅れてしまうという状況になります。

    たしかに、4年生の春や夏に日本に戻ってこられれば、「4年間での卒業」ということはできるのですが、就職活動にしっかりと取り組むことができないため(就職活動に遅れてしまうため)、就職活動が不完全燃焼になってしまいます。

    そうすると、希望した企業に合格することができなかったり、そもそも希望する企業を受験することができなくなったりすると、海外留学をすることにより、就職活動が不利になってしまいます。

    これを防ぐためには、3年生の春とか、2年生のうちから留学に行ければいいのかもしれませんが、それはそれで、卒業に必要な単位をたくさん残したままで留学に行くことになったり、必修科目については早い学年で単位を取得していないと、その後の履修がうまくできないということになったりするので、それもうまくいかないと思っています。

    職員の中には、「留学をするなら5年間を前提に考えなきゃいけない。あれもこれもほしがるのはよくない。」と考える職員もいるのですが、私個人としては、なんとか4年間で、留学もできて、就職活動もちゃんとできて、卒業もできるという体制が整えられればいいなと思っています。

    でも簡単にいく話ではないということも理解しているので、何ともしがたいなぁという気持ちです。

    学生の気持ちを汲んであげたいし、でも大学としても必要な教育(勉強量)は提供しなきゃいけないし、政府が企業の採用スケジュールを調整しようとしてもなかなかうまくいかないしと色々と思うところはあるのですが、現場では、学生に親身になって現在の状況を話してあげるしかないと思っています。


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